時代を分析するツール・手法について考える

現代がどのような時代なのかを理解することは重要である。それを知ることで、時代に流されることも、時代に逆行することもなくなるからだ。

まず、時代に流されないようにすることは重要だ。戦争前や戦時中の時代がもっとも顕著だが、時代に流され、時代の肯定する価値観に身を投じることは、倫理的にも、個人の利益にとっても最悪な選択となりうる。

また、時代と逆行しすぎることも避ける必要がある。その時代の流れは、いわばスタンダードな価値観であり、これを理解し、そこに合わせたアプローチを取らないと、多くの人々に受け入れられることはない。

したがって、時代に流されることなく、かといって、逆行することもなく、付かず離れず、うまく付き合っていくことが大事である。つまり、時代を冷静に客観視し、その特徴を理解することが大事である。

そして、時代を理解す手段として、時代を分析するツール・手法が必要なのである。

時代を分析するツールとは、時代の特徴を抽出し、それを他の時代とも比較できるようにするものである。そのため、ツールは、あらゆる時代に対して使うことができ、その時代特有の特徴を抽出し、他の時代と明確に対比されるようなものでなくてはならない。

ここでは、その分析のツールとして、時代を特徴づけるいくつかの概念を取り上げて、検討したい。

 

誕生から崩壊までのサイクル

まず、あらゆる時代を分析するツールとして、誕生から崩壊までのサイクルという概念が有用である。

歴史上、様々な国が現れては消えていった。そうした歴史上の国々には、現れてから消えるまでの共通のサイクルがある。そのサイクルを大きく分けると、以下のようになるだろう。

黎明期

成長期

安定期

停滞期

衰退期

崩壊期

これらのサイクルは、歴史上では主に、国の歴史などの規模の大きなものに使われる。

だが、このサイクルは、あらゆる流行やモノやサービス、コンテンツなどに対しても当てはめられる概念だろう。

現代を分析するときにも、現代における流行・雰囲気・価値観・思想が、このサイクルのどれに当てはまるのかを考えることで、現代という時代を分析することができる。

たとえば、多様性やSDGsという価値観は、一時の流行の峠は越して、停滞・衰退期にあるように思われる。コンテンツで言えば、ショート動画などのショートコンテンツは、人気を保っており、安定期にあると思われるが、今後、そのままの安定を続けるのか、停滞→衰退へと向かうのか注目する必要がある。

このように、現代という時代を特徴づけるものは、同時に複数存在し、それらが複合して現代を形成している。それらのいくつかの流行・価値観などを、サイクルの期に当てはめることで、それぞれの特徴のバランスや展望が理解でき、現代の分析に役立つ。

 

対立する価値観

次に、時代を分析するために、対立する価値観を使うことが有用である。

これは、対立する価値観を、直線の両端に取り、その時代がそのどちらにどれほど寄っているのかをプロットすることで、時代の特徴を示すものである。

対立する価値観は、具体的には、以下のようなものが考えられる。

組織的・個人的

これは、その時代がどれだけ組織・集団志向であるか、あるいは、個人志向であるかを示す軸である。

現代は、かなり個人志向であるといえるだろう。戦時中から戦後復興にかけては、組織・集団思考が強かったと思われる。

進歩的・懐古的

これは、その時代が未来的・進歩的な価値観を重視するか、それとも過去的・懐古的な価値観を重視するかを示す軸である。

現代は、進歩的でもあり懐古的でもあると思われる。一方ではAIなどの先端技術によって、時代の変革が予感されつつ、そういったデジタル的なものの支配に嫌気がさした人々によるレトロへの回帰も同時に生じている。

秩序的・混沌的

これは、その時代が、現体制に対して、従順であるか、反抗的であるかを示す軸である。

体制とは何かという問題はあるが、その時代の権力や支配的なシステム・雰囲気だと捉えると、高度経済成長期は、秩序的であったと考えられる。なぜなら、このままの社会を続けることで、よりよい未来が待っているという確信があり、現状を肯定していたからである。

現代は、日本に限らず、やや反体制的で混沌とした情勢であるだろう。

陰・陽

これは、その時代が、陰的な雰囲気なのか、陽的な雰囲気なのかを示す軸である。言い換えれば、明るいのか暗いのか、ポジティブなのかネガティブなのかである。

この雰囲気は、その時代の経済状況と将来予測が大きく影響を与える。典型的なのは、バブル期と、「失われた30年」期である。

前者は、好景気とそれが続くという楽観視のもと、戦後、最も陽も雰囲気を持っていた時代だろう。後者は、長引く不況によって、社会全体の雰囲気が陰鬱であった時代だといえるだろう。

 

まとめ

以上、時代を理解する重要性と、そのためのツールを論じた。

これらのツールは、時代の特徴を効率的に抽出し、それらを各時代と一元的に比較しうるものである。

この他にも有用なツールを発見すれば、また付け加えていく予定である。

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