今回は、『チェンソーマン』第1期の最終回である第12話「日本刀VSチェンソー」についてまとめる。
今話は、いよいよ、ヤクザたちやサムライソードとの決戦だ。そして、前回、本音を漏らしたアキがどのように成長するのかも、今話の見どころである。また、今後の展開の重要な伏線もある。
この記事では、そんな第12話「日本刀VSチェンソー」について、その内容と、重要シーンや伏線をまとめ、ストーリーの分析と感想を語る。
内容まとめ
幽霊の悪魔、アキを助ける
アキは幽霊の悪魔に絞め殺されそうになった。
そこで、アキは、姫野にタバコを一本勧められたことを回想する。そのとき、アキは未成年だったため、姫野は、「この一本は、大人になって、何かに寄りかかりたくなったとき」のために、預かっておくと言う。
回想が終わると、幽霊はアキを放していた。そして、幽霊は、そのときのタバコをアキに渡す。そこには、「Easy revenge!」と書かれていた。
アキ、姫野を思い出しながら、幽霊の悪魔を斬る。
愕然とする姫野の首元に、コベニが後ろからナイフを当てる。姫野を確保。
アキ、コベニに公安に残った理由を聞くと、「もうすぐボーナスがでるので」。
パワーとデンジ、エレベーターにて
エレベーターの扉開くと、大量のゾンビ。ゾンビは、気づいていない。
デンジ、「こいつら気付いてないから大声出すな」と言った直後、パワー大声だす。
パワー、ゾンビに戦いを挑む。デンジについてくるように言うが、デンジは無視して、上階へ。
デンジとサムライソードの会話
サムライソードは、じいちゃんと仲間に謝れと言う。仮に彼らがゾンビになっていたとしても、元は人間。それを殺して、「心が痛まないのか?」と言う。
デンジ、「全然」と返事。
サムライソードは、沢渡のせいで、心臓が刀の悪魔になっている。それでも、ゾンビを殺せば、夜も眠れないと言う。そして、人の良心が残っているなら、おとなしく殺されろと言う。
デンジ、「うーん、やだ」とふざけた感じで言う。
戦闘開始。
デンジとサムライソードの戦闘
ビルの屋上から、電車の屋根に着地。戦いは、全体的にサムライソードが押している。
サムライソード:
「デンジ、お前は何のために戦ってる」
デンジ:
「この生活を守るため、かな」
「口うるせえのと、わがままなのがいるが、そこそこ気に入ってるぜ」
サムライソードは、デンジが豪華な生活をしていると勘違いする。
戦闘再開。電車内に落ちる。
そこで初めて、乗客が二人の戦いに気付き、「異常が発生した」というアナウンスが流れるなか、戦い続ける。
サムライソード:「じいちゃんに教わらなかったか?退き時ってやつをよ」デンジ:「じじいに教わらなかったかあ?獣が狩人の言葉、信じるなってなあ」
その瞬間、サムライソードは真っ二つになって倒れる。
実は、デンジが、脚にチェンソーを発現させており、「頭のチェンソーがある=頭しか残っていない」はブラフだった。
戦闘終了後
拘束されたサムライソード。サムライソードは、デンジが刀を抜いたら、体が元に戻った。デンジと同じ。
デンジ:
「お前は姫野先輩を殺した。ツラのいい美人がテメエのせいで世界から一人減ったんだよ。なのに、テメエは反省もせず、一生刑務所暮らし。それじゃ俺がすっきりしねえ」
デンジ、アキにサムライソードのキンタマを蹴って、大声を出させるゲームをしないかと持ちかける。
アキ、姫野は喜ばないといったんは断るも、「Easy revenge!」のたばこを見て、参加。
悶絶し、叫ぶサムライソード。
アキ:
「姫野先輩、聞こえるか?俺たちからあんたへのレクイエムだ」
マキマとお偉いさんとの会話
マキマ、今回の事件を報告。
沢渡あかねは、銃の悪魔と契約し、銃をヤクザに渡す。その代わりに、チェンソーの悪魔の心臓を求めていた。
なぜ、心臓を求めたのかを聞く前に、沢渡は死亡。自殺か、あるいは、銃の悪魔との契約だったか。
ビルから銃の悪魔の肉片を回収。すでにあった肉片と合わせると、肉片が本体に動き出した。
パーティーのあと
デンジ、パワー、アキで、家で寿司パーティーをする。
アキ、姫野からもらった「Easy revenge」のたばこを、ひっくり返して吸う。吐いた煙が天に昇る。
デンジ、夢を見る
寝ているデンジは、夢を見る。その夢は、第一話冒頭の夢と同じで、狭い裏路地を曲がった先に、鉄板か紙のようなものが貼り付けられた、アパートのドアのようなものがある、というものだ。
その夢は、デンジが幼いころから何度も見ている。夢のなかのデンジは、子供の姿。
「いつも見る夢だ。いつも見ていつも忘れる夢」
そこにポチタの声がする。デンジは、ポチタの姿を見ようと、ドアを開けようとする。すると、ポチタは、
「デンジ、絶対に開けちゃダメだ」
と言う。
田舎のネズミと都会のネズミ
謎の女が最後、
「デンジ君はさあ、田舎のネズミと都会のネズミ、どっちがいい?」
と言う。
重要シーンと伏線
Easy revengeの意味
幽霊に渡された「Easy revenge」と書かれたタバコ。この意味は何か?
おそらく、take it easyと同じような意味で、「気負わず、肩の力を抜いて、復讐して」というような意味になるだろう。あるいは、それを祈っているとも考えられる。
とにかく、それまでのアキの破滅的な復讐ではなく、もっと気楽に、ゆとりを持って!というニュアンスなのだろう。
回想での姫野
幽霊の悪魔の首を斬るとき、アキは、姫野のことを回想する。
そして、「姫野先輩、もうすぐ俺もいきます」と言う。確かに、アキの余命は残りわずかだ。だが、姫野はアキにはすぐ来てほしくはないだろう。
そして、回想での姫野は最後に何かを口パクで言っていた。何と言っていたのだろうか?
そして、回想での姫野は、明らかに、今までで一番美しく描かれていた。
コベニ、ボーナスがでるので
それまで、アキと幽霊の戦闘と、姫野の回想をするシリアスで真剣なシーンだったのに、公安に残った理由を尋ねられたコベニの「もうすぐボーナスがでるので」というふざけた回答。
さらに、BGMに緊迫した音楽まで使っており、視聴者は肩透かしを喰らったようになる。
この作品は、まじめな雰囲気に耐えられないのか、シリアスになり緊張感が高まったら、こんな感じで脱力させるのを毎回やってくる。
とにかく謝って欲しいサムライソード
サムライソードは、とにかくデンジに謝れと言ってくる。
どんだけ謝って欲しいんだ、と突っ込みたくなるほどだ。というか、多分、作者側はそれを意図して、半分ふざけているのだろう。
そして、最後にはキンタマを蹴られ泣き叫ぶサムライソードは、ほとんどネタキャラであるといえるだろう。
ただ、そんなサムライソードとデンジには、心臓が悪魔になったという共通点がある。
サムライソードは、おそらく、人間でなくなってしまったことを気にするあまり、人間的であることに執着している。ゆえに、ゾンビを殺して罪悪感を覚えることをわざわざデンジに言っているし、特に何の利益にもならない謝罪を要求し続けている。
これに対し、デンジは、おそらく元々、人間的であることにこだわりがない。だから、心臓が悪魔になっても、人間でなくなってしまうんじゃないかといった心配は大してしない。
ここが対比されているのだろう。
デンジの行動原理
デンジは、姫野が殺されたことに対して、ツラのいい美人が一人減ったと言っている。
こう聞くと、凄まじく自己中心的だが、他人の死を嘆いてもいる。
また、デンジは、パワーとアキとの共同生活を、「そこそこ気に入っている」と言う。
このように、デンジは、他人のことを考えてはいるし、共生もしている。他人を必要だとも考えている。その点で、デンジは、自己中心的だが、悪ではない。
Easy revenge!のたばこを吸う
すべてが片付いて、アキは、姫野からもらった「Easy revenge!」と書かれたタバコを吸う。これは、おそらく解釈が分かれるシーンだろう。
ストレートに考えると、姫野からもらったタバコを吸い、その煙を天に向かって吐いていることから、姫野の仇を討ったことを、天国の姫野に伝えているととれる。
しかし、姫野からのメッセージの書かれたタバコを吸ってしまうのは、姫野の形見を消してしまうことのようにも思える。また、姫野が書いたrevengeは、アキの銃の悪魔に対する復讐だろうから、まだ復讐は果たしておらず、メッセージの内容はまだこれからも有効であろう。
ゆえに、ここで、タバコを吸ったことは、さまざまな解釈の余地がある。
解釈の一例として、たとえば、今までは、復讐で「自分を見失っていた」アキが、今回の件を通して変化し、姫野のメッセージを理解したから、「もう大丈夫だよ」という合図なのか、あるいは、姫野亡き後、「何かに寄りかかりたくなった」から吸ったのか、それとも、姫野の死に区切りをつけるために吸ったのか。さまざま考えられる。
デンジの夢とネズミの話
これは、明確な伏線だろう。現段階ではまだよくわからない。
ただ、ポチタが、声だけとはいえ、夢に出てきたのは、今回が初めてだ。
第12話総括
今回の第12話が第1期の最終話だった。
ストーリー的には、とりあえず、ラスボスの銃の悪魔に辿り着く有力な手掛かりを得た段階で、一区切りとなった。
これからの展開は、銃の悪魔との戦闘準備に入りつつ、公安内部での対立も徐々に起きてくると予想される。特に、マキマを中心に、それぞれの思惑がぶつかり合いそうな予感がある。
キャラクターの成長・変化という点では、第1期は、アキが主人公だったといってもいいだろう。特に、姫野が亡くなった第8話以降の事実上の主人公はアキだった。
アキは、復讐に囚われ、自分を見失っていたが、姫野の死とそのメッセージ、そしてデンジらとの関係を通して、復讐は目指しつつも、ゆとりをもち、日常生活にも楽しみを見出せるようになった。こういった、精神的な成長・変化がメインテーマであったように思える。
そして、こうした過酷で死と隣り合わせの世界を、ぶっとんだキャラとコメディ的な演出で、面白くまとめているのが、『チェンソーマン』の魅力なのだろうと、あらためて感じた。