2026年1月3日、アメリカはベネズエラを攻撃し、ベネズエラ大統領夫妻を拘束し、アメリカに移送した。
この衝撃的な出来事を通して考えてみたいのは、この件が、正義という理念の形骸化を新たなフェーズに進めたのではないかということである。
言い換えれば、国際政治の場がより露骨に、剥き出しの弱肉強食の原理で動き出したのではないかということである。
前提情報
アメリカの今回の行動に対する善悪の判断はさまざまありうるだろうが、この件が国際法に違反していることについては、疑問の余地がないはずだ。国内情勢がいかに混沌としていようと、ベネズエラは主権国家であり、そこを攻撃し、そのトップである大統領を、いわば、拉致することを法的に正当化する理屈はないはずだ。
仮に、ベネズエラ国内の情勢を見かねて、ベネズエラ国民を助けるという大義名分を掲げたいならば、国際社会の協力や同意を取り付けるのが先だろう。そもそも、トランプ大統領、並びにアメリカ政府は、そういった大義名分を掲げてはいない。
彼らの主張は、概ね、
・ベネズエラがアメリカに麻薬を持ち込んでいる
・アメリカのベネズエラに対する石油への投資が国有化によって不当に奪われた
・アメリカは安全な国に囲まれる必要があるが、ベネズエラの体制は、反米であった
・これらの元凶がベネズエラ大統領にあった
・ゆえに、大統領を拘束した
・そして、ベネズエラを当分の間、アメリカが運営する
というものである。
また、新たに、トランプ大統領は、ベネズエラの原油を一定量米国に引き渡し、その売り上げをトランプ大統領が管理すると発表した。
むき出しにされた本音
以上の発言をまとめると、アメリカにとって害であったベネズエラを、アメリカの利益になるように作り変えると言っているように聞こえる。
実際、トランプ大統領は、ベネズエラの石油による売り上げによって、今回の軍事行動などによってかかる費用を上回る利益を得られると言っている。
歴史上今までも、アメリカは自国の利益を追求してきたが、ここまで明け透けに、露骨に、むき出しの本音を語ることは、かつてないことのように思える。
今までは、口先だけでも自身の正当性を唱えたり、正義であったなどの弁明を一応は、全面に押し出していたはずである。
今回のトランプ大統領をはじめとするアメリカ政府の一連の発言をみると、もはやそういった正当性や正義の主張という建前を語ること、そして、本音を隠そうとする意図を放棄しているような印象を受ける。(今回も正義を援用した弁明はしてはいるが、存在感は薄い)
建前・綺麗事の崩壊
正義という理念は、とうの昔に機能を停止しつつあった。とくに、国際社会や政治の場ではそうである。その代わりに、自国や自分の利益を求めることが公然と求められてきた。そして、その象徴がトランプ大統領であった。
つまり、今回の件と、それに伴うトランプ大統領の発言は、この流れの延長線上と考えれば、十分予想できたことであり、さほど驚くべきことではないのかもしれない。
しかし、やはり、今回の件は、たとえ口先だけであっても、「正義」や「理念」といった綺麗事・建前の果たす役割が大きく後退し、ほとんど形骸化というよりも、形すら残さず崩壊しつつあることを示していると思われる。
今までその現実的な力は疑問視されつつも、正義という理念・建前は、大国の利己的な野望に歯止めをかけ、大国が自身の行動に客観的な正当性をもたせる役割を負っていた。そうでなければ、国際社会から正義の名の下に非難されるからだ。
だが、もはやアメリカが正義という理念を無視し、その非難も意に介さないならば、「正義」という理念は空虚な言葉となり、死語となる。
今回のアメリカの攻撃が、その最初のステップであるとするならば、今後、国際社会は理念抜きの純粋な実力=軍事力によって、各国が自国の利益を剥き出しで求める血生臭い時代が訪れることになるだろう。
出典
・トランプ氏インタビュー(YouTube)
・トランプ大統領、ベネズエラが原油をアメリカに引き渡すと表明(YouTube)
・ベネズエラが「原油最大5000万バレルを米国に引き渡す」、トランプ氏が表明…中国向けを「横取り」か(読売新聞)
トランプ氏インタビューより
they stole our oil
it won’t cost us anything because the money coming out of the ground is very substantial
we want to be surrounded by countries that aren’t housing all of our enemies all over the world