アニメの思想的な比較・分類方法について

 

アニメを思想的に分析するとき、上の図のような軸で比較し分類すると、効果的だ。

それぞれの軸の両端には、対照的な属性が置かれている。

「組織的」と対照的なのが、「個人的」であり、「普遍的」と対照的なのが「時代的」である。

以下、それぞれの属性について詳しく説明する。

 

組織的・個人的

組織的とは

組織的であるとは、作品全体が、組織的な志向をもっているということである。

このタイプでは、多くの場合、主人公が組織に属しており、主人公が、その組織の成功や、組織の皆の幸福を目的としている。

たとえば、『鬼滅の刃』は、このタイプに属する。

主人公の炭治郎は、鬼殺隊に所属し、その組織に所属する人々ともに、成長していく。そして、鬼殺隊のメンバーたちと一緒に、組織の目的を達成することが、炭治郎の目的であり、作品全体の目的でもある。これは、典型的な組織的性質である。

あるいは、「スポーツもの」もほとんどがこれに当てはまるだろう。チーム内の人間関係で色々ありつつも、最終的には仲間同士で絆を深めて、大会の優勝を目指すという構造は、まさに組織的である。

簡単に言えば、「みんなで一緒にがんばる」ことを目的にする作品がこれに該当する。

個人的とは

これに対して、個人的なアニメとは、個人的であることを志向しているものである。

この「個人的」には、以下のような、さまざまな種類がある。

①自己拡大系

これは、絶対的な中心としての主人公が、個人として存在する。そして、その主人公が、成長するにつれ、周りに影響を与え、周りを影響下・支配下にしていくことで、個人が中心のまま、その個人が集団へと拡大していくタイプの作品である。

典型的なのが、「なろう系」である。

②ぼっち系

これは、いわゆる「ぼっち」を志向するタイプである。

このタイプは、現代社会の面倒な人間関係を避け、一人で楽しく生きようとする作品が多い。

典型的なのは、「田舎でスローライフ系」や「ソロ〇〇系」である。

③追放・リンチ系

このタイプは、主人公が、反組織・反集団的であるがゆえに、個人を志向する。

反集団である理由は、主人公が組織から「追放」されたパターンや、いじめられ「リンチ」にあったパターンがある。

いずれにせよ、このタイプは、主人公のみが個人であり、主人公以外は、主人公に対立する集団を形成して、主人公に敵対しているケースが多い。

④騙し合い系

これは、主人公を含めた全員が個人主義的で、それぞれが互いに、敵か味方か定まらず、腹の中を探り合うような関係である。

スパイもの、あるいは、デスゲームものはこのタイプが多い。

⑤思考・内省系

これは、物語が、主人公や他のキャラクターの思考によって進んでいくパターンである。ゆえに、モノローグ(一人語り)が多いのが特徴である。

学園ものであれば、集団に属しつつも、どこか俯瞰して自分で思考しているタイプの主人公がこれに当てはまるだろう。

また、主人公の内面の葛藤や、思想的な深まりを中心に描いている作品もこれに該当する。

 

普遍的・時代的

普遍的とは

普遍的であるとは、その作品に、時代的な要素がない、あるいはその要素が薄いということである。

時代的な要素とは、そのアニメが放映された時代の特徴のことだ。その要素がないということは、そのアニメは、どの時代においても同じように観ることのできる、普遍的な作品であるということだ。

その普遍性は、主に、次のような点にある。

道徳・正義

道徳や正義にも時代の特徴はあるが、アニメとして道徳や正義をテーマとする場合、普遍的なものになりやすい。

たとえば、弱い人を助け、悪を倒すというような道徳・正義は、普遍的なものである。『鬼滅の刃』はこれに該当するだろう。

構造

また、構造においても、普遍性が存在する。構造における普遍性とは、お決まりのパターンに則って、物語が展開することである。

たとえば、『アンパンマン』のような勧善懲悪的な構造である。この構造は、古今東西ほぼすべての物語がそなえている構造でもある。[1]

あるいは、『名探偵コナン』のように、日常→事件発生→推理→解決→日常というような構造も普遍的である。

時代的とは

正確には、同時代的と言った方がいいだろうが、時代的であるとは、その時代の雰囲気、感情、思想を反映させているということである。

多かれ少なかれ、あらゆる作品は時代の影響を受けてはいるのだが、特に時代を反映させるような意図を感じ、また、時代とリンクさせて分析する必要があると思われる作品を指す。

 

まとめ

以上のような軸を用いて、このサイトでは、さまざまなアニメを分類し、分析していく。

各アニメの分類と分析はこちら↓

アニメ分析

 

注釈

[1]ストーリーの普遍的な構造についてはこの記事で扱っている。

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