現在、大阪で、万博が開催されている。累計来場者数は2000万人を超え、連日混雑具合が話題となっている。[1]
だが、そもそもこの万博は、開催される前、いくつもの問題を抱えていた。
・昨年の3月にはメタンガスによる爆発事故が起き、今年の4月6日時点で、基準値を超えるメタンガスが検出された。
・会場アクセスの悪さ
・先行販売チケットの売り上げ不振
・建設費高騰により、当初の予算より1000億円以上の予算増になった
・建設スケジュールの遅れ
・劣悪な労働環境
・下請け会社への未払い(開催後も)
[2]
他にも大小さまざまな問題が発生しており、開催前の雰囲気は、万博自体への嫌厭ムードであったし、「万博開催をやめろ」という声も大きかった。
それにもかかわらず、現在、万博は大盛況といっていい状況だ。
これは一体どういうことなのか?その理由について、世論の動き、大衆の心理から考えてみる。
大衆の健忘症
まず第一に挙げるべきなのは、大衆が健忘症的であること、すなわち、大衆は忘れっぽいのだ。
何か事件があって、それが一時的にニュースに取り上げられて盛り上がったとしても、数ヶ月経てば、そもそも問題があったことさえ覚えていないことはザラだろう。実際、上に挙げた万博の問題点をしっかり覚えている人は少ないだろう。
手のひら返し
第二に、大衆は手のひら返しをする。すなわち、意見をひっくり返す。
これは、以前に自分が反対していたことも、健忘症的に忘れているからなのか、それとも、覚えていて、手のひらを返すのかはわからないが、とにかく、周りの雰囲気、盛り上がりに乗じて、意見を変える。
今回の万博もそうであるし、2021年の東京オリンピックの時も、あれだけコロナ禍での開催に反対していたのに、オリンピックが始まって、盛り上がれば世論は変わっていった。
意見=感情の発散
大衆は、個々のニュースに対して、様々な「意見」を言う。それは、特に、ネット上で可視化される。万博開催前も、ネット上では、万博開催に反対する声が多数だったと記憶している。
だが、現在、万博は盛り上がり、そのような反対の声の勢いはすでに衰えている。
この現象を考察するなら、開催前に多数存在した開催反対の「意見」は、意見というよりも、一時的な感情の発散に過ぎなかったのだ、と考えられる。
考えてみれば、ニュースに対して、真剣に考えて意見をもつ人はそうはいないだろう。大衆は、何となく反応しているにすぎない。
目の前に万博の問題点が提示されれば、「反対だ」と言い、来場者数が増えていると言われれば、「よかった」と言う。かつて、目にした万博の問題点は、解決されていなくても関係ない。というか、そもそも覚えていない。
大衆の無責任と残酷さ
上記のことから、大衆は無責任であるといえる。何か事件があってもすぐに忘れるし、過去の自分の「意見」を、特に理由なくひっくり返し、一貫性を保とうとしない。つまり、大衆の「意見」は意見ではないし、信用もできないのである。
そして、ここ最近、大型イベントにおける、ブラックな舞台裏がいくつも暴かれたが、結局、イベントは盛り上がり続けている。[3]
このことから分かるのは、そのイベントの裏にどんな不正や、人々の犠牲があろうと、大衆はイベントを楽しむということだ。
つまり、大衆の正義感は、芸能人の不倫には発揮されても、目の前に楽しいイベントがあれば、発揮されないということだろう。
これこそが、大衆の残酷さである。彼らは、感情で動く。自分の感情が高まらなければ、興味ももたない。そこに、正義とか悪とかは関係ない。あえていえば、大衆にとって、楽しいこと(感情が動くこと)が正義なのである。
万博が楽しければ、その裏側の不正は気にしない。芸能人の不倫を叩くのも、楽しいからする。
だからこそ、政治家は、金配れば票がもらえるなどと考えるのだろう。ある意味、彼らは、大衆が、目の前の自分の楽しみや得にしか目が向かないという習性をよく知っているのだ。
まとめ
そうはいっても、大衆とは、こういうものなのだ。これを、愚かだと言っても始まらない。
これを前提に、自分は自分で考える必要がある。そして、自分もまた、その大衆の一人であることを忘れないようにしなければならない。
注釈
[1]https://news.yahoo.co.jp/articles/8ebeebca1035b3c0f4c270ad9784cdfd1eb62e3e [2]https://toyokeizai.net/articles/-/871466?page=2
https://asahi.gakujo.ne.jp/common_sense/current_events/detail/id=3688
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250919/k10014927311000.html
https://news.yahoo.co.jp/articles/b01d7def02edb137e607e4162121e3594350757d?page=1
[3]東京五輪・カタールワールドカップ・大阪万博など。