政党のチームみらい・安野たかひろ党首が、インタビューにおいて、「早い政府」を目指すと主張していた。
ここでは、この安野氏の主張を分析し、賛成点と懸念点を分けて、批評する。
インタビュー動画↓
https://www.youtube.com/watch?v=8JdAce6xTQQ
安野氏の主張
社会・国際情勢は急速に変化している。
それにもかかわらず、政府の対応は遅すぎる。
例:物価高対応、ガソリン減税など時間がかかりすぎ
解決策として、社会の変化に自動的に追従する仕組みを法律に組み込むことを主張。
たとえば、物価や最低賃金が何%上がったら、基礎控除を何%上げるとか。
そうすれば、社会変化の早さに対応する早い政府ができる。
また、不確実性(例:AIの進歩、戦争、パンデミック)にそなえて、あらかじめ対応を合意しておけば、いざというとき、早い決断が下せる。
このような、いわゆる、シナリオプランニングが必要である。
遅い民主主義のメリットとの関係
前回の記事で、民主主義は、その遅さがゆえに、感情に過度に影響されず、物事を決定できると論じた。
安野氏の主張する「早い政府」は、あくまでも、変化に対応するスピードを早くするのであって、対策の決定を拙速にするものではないだろう。
動画内で、安野氏が「その背景にある考え方まで、政治家同士が合意すれば(18:16)」と言っているように、事前に十分に協議した上で、いざというときの対応の速度を早めようと主張しているのだと考えられる。
したがって、安野氏の言う「早い政府」は、遅い民主主義の利点とは、両立するものであると考えてよいだろう。
主張への批評
ここからは、安野氏の主張に対して、批評を行う。
対立する意見はまとまるのか
安野氏の主張する「早い政府」は、物価高対策とか、基礎控除引き上げといった、合理的根拠によって決定できる政策に対しては、間違いなく必要で、有効な施策である。
なぜなら、それらは明らかに正しい施策だからであると数値を用いて客観的に説明できるからだ。
たとえば、年収の壁とか、ガソリン税は、誰が見ても時代遅れの税制であったし、物価高対策が必要なことは、誰の目から見ても明らかである。
このように、明らかにやった方がいいのにやっていないこと、あるいは、効率が悪いことを早く対処することは必要だし、それは、当たり前のことである。
この当たり前のことすら達成できていないのが、日本の政治の現状であり、これが改善されるだけでも、大きな意味がある。その点では、安野氏や、チームみらいのやろうとしていることの意義は大きい。
だが、本来の政治において、全員が賛成するようなことは勝手に決まるはずである。
政治の本質は、世論が割れるようなことについて、どのように決定し、遺恨を残さないかであろう。
この点を考えると、変えることに賛否があるシステム、あるいは、変え方に意見の対立のあるシステムについては、あらかじめ決めておけるのか?
あるいは、実際に決めておいたとおりに、変えることができるのか?という問題があるだろう。
たとえば、AIがより進化し、多くの人々の仕事を奪うようになったとき、どの程度まで格差を許容するか。
パンデミックが起きたとき、どの程度、人々の行動を制限するのか。
こういった思想的な対立が生じるような問題を前にすると、結局、事前に制度に対応を埋め込んでおくという策は、どう対応するのかを決めることができずに、先送りされ続けるようにも思える。
政府への権限委譲の問題
また、社会変化は予測が難しい。インフレ率のように数字で表せるものを尺度に、その対応をあらかじめ決めておくならばできるだろう。
だが、どうなるかわからないケース(震災・パンデミックなど)を事前に想定し、シナリオごとに、逐一対応を決めておくことは難しいだろう。
そのような場合でも、「早い政府」を遂行しようとすると、政府に対して、ある程度の権限委譲をする必要がでてくるはずだ。
この場合、リスクが生じてくる。
たとえば、災害への対応として、事前に、災害の規模に応じて、いくつかのケースを想定する。
そこで政府が「最悪のケース」を想定し、そこに、国民の自由を大幅に制限できる対応を決めておいたとする。
そして、これはあくまでも「最悪のケース」だから、実際は、その対応をとることはほぼない、と説明したとする。
だが、実際、災害が発生した場合、「早い政府」が「早い」対応をするには、発生した災害がどのケースに当てはまるのかを、政府が判断する必要がでてくる。
となると、ある程度、政府は恣意的な解釈を行える権限を有することになり、法的な根拠をもとに、国民の自由を制限することが可能になる。
事前にシナリオを描いておくということは、こういったリスクもあるので、その対策も必要だろう。
まとめ
とはいえ、以上のような懸念点は、民主主義である以上付きまとう問題であり、一朝一夕でどうにかできるものではない。
とりあえず、今は、当たり前のことを当たり前に、素早くやってもらう方が大事なので、「早い政府」には期待したい。

