『チェンソーマン』「第11話 作戦開始」も面白かった。
今話は、次回の最終回の戦闘に向けての準備がメインであったが、さまざまな新たな情報が登場し、各キャラクターの内面も新たに窺い知れた。特に、岸辺とアキについては、今までとは違った印象を与える回となった。
この記事では、そんな11話の内容を軽くまとめ、今後のストーリー上重要そうな点と伏線的な謎を挙げ、そして、全体としての分析を行なっていく。
内容まとめ
アキが未来の悪魔と会う
アキ、未来の悪魔と対面する。
前話の終わりでは怖そうだったが、未来の悪魔は、陽気そうに「イェイイェイ、未来最高ー」と踊り出す。
アキ、未来の悪魔に、顔をお腹に突っ込んで、悪魔に未来を見せる。
そして、アキは、右目のみで悪魔と契約。理由は、「未来で最悪な死に方をする」から。
未来の悪魔が、アキにの死に方を言おうとすると、
「言わなくてもいい。自分の死に方には興味ない。俺は俺が殺したい奴を殺せれば、あとはどうなってもいい」
デンジ・パワーと岸辺
デンジとパワーは岸辺に、動きは100点、あとは、状況に応じて判断しろと言われる。
そして、明日、襲撃してきた奴らと戦うと言われる。失敗すれば、4課解体。デンジとパワーは、岸辺とマジバトルになる。
岸辺とマキマの会食
岸辺、育てた犬が死ぬたびに酒の量が増える。
岸辺、マキマに、襲撃を知っていて見逃したなと言う。
岸辺:
「お前がどんな非道を尽くそうと、俺の飼い犬を殺そうと、人間様の味方でいるうちは見逃してやるよ。『うち』はな」
マキマ、あくまでも悪魔から人を救うため。今回の作戦を成功させれば、4課の存在を積極的に報道してもらえる。と説明。
岸辺「嘘つき」と言い、マキマは微笑む。
襲撃に備えるヤクザ事務所
事務所には、組員、刀の男=サムライソード、沢渡がいる。
組長は別荘に移動。組の者、刀若=サムライソードにも、移動を提案。
沢渡:
「マキマが生きている限り、日本には逃れる場所はない」
襲撃に備えることを決定。
沢渡:
「お前たちの若の心配はいらない。死んでも蘇るからな」
地下には、デンジの借金取りをしていたヤクザ「じいちゃん」が残したゾンビがいる。(第1話参照)ゾンビに噛まれると、ゾンビになる。それで4課を壊滅させる作戦。
アキ、京都からの二人と車中
車の中で、京都から来た男がアキに、銃の悪魔を「本気で殺せるって思ってます?」と聞く。
男は、自分たちも銃の悪魔にやられたことをきっかけに、公安に入った。だが、銃の悪魔を殺そうとは、思っていない。普通に考えたら無理だとわかる、と言う。
「正直、アキくん見てると、むかつくんですよ。弱いくせに、漫画の主人公みたいな目標掲げて」
アキは、
「俺の前でごちゃごちゃ言わないでくださいよ。あんたは黙って見てればいい。俺が負けて死んだそのときに、笑いに来てくださいよ」
「今、自分が自分を見えなくなっているのは、わかっています。でも、じゃなきゃやっていけないのも、わかってるんです」
ずっと男の態度が悪かった理由が判明する。そして、アキも自分を曝け出し、本心で話した。
男、青春漫画のワンシーンのように、缶コーラを投げ、
「アキ君、君のことムカつくけど応援しとくわ。最後にこの言葉を贈る」
「特異課には、まともなやつはいないから、気をつけな」
マキマと組長
別荘にいる組長へマキマは乗り込み、この件に関与した人間の名前を、他の組の人間も含めて教えるように言う。
それに激昂し、殴りかかろうとした組員の男は、急に鼻血を出して倒れる。
マキマ:
「あなたの言う必要悪というものは、悪事を行う自分を正当化する言い訳です」
「必要な悪というのは、常に国家が首輪をつけて、支配しているものです」
4課、突入
ヤクザのビル内の制圧に動き出す特異4課。
アキと対峙した組員、鼻血を出して倒れる。
アキ、沢渡と対峙。沢渡は「蛇、吐き出し」と言い、姫野の契約していた幽霊の悪魔を出現させる。直後、沢渡も鼻血を出すが、倒れない。
アキ、幽霊の悪魔と戦闘開始。
アキは未来の悪魔と契約し、少し先の未来を見ることができるようになり、動きはよくなるが、戦闘能力はそのまま。幽霊に首を絞められ、意識を失った?
重要シーンと謎
岸辺とマキマの確執
岸辺は、デンジとパワーを強化するために、修行中何度も殺すヤバいやつだ。だが、初登場時も、姫野と墓地に行っていたり、今回も、「育てた犬が死ぬたびに、酒の量が増える」と言っており、実はまともで、人の心がある人物なのだろう。
一方で、マキマは、目的のためなら手段を選ばないし、仲間が死んでも何とも思わない非道さをもっている。
両者は、おそらく人間サイドでは、作中屈指の強キャラであり、この二人は、人間のために行動するという目的のもとで協力関係にある。
だが、今回、岸辺が「嘘つき」と言ったのは、何らかの反人間的な目的がマキマにあることを感知したからだろう。
つまり、二人の間には確執が生まれており、最終的にはいずれ対立することが予期される。
マキマの能力と思想
マキマには、離れたところからでも、名前と身代わりによって、人を殺せる力があることがわかっている。(第9話参照)
その能力の範囲が、今回の沢渡の発言で、日本全土であることがほぼ確定しただろう。このことと、マキマが内閣官房長官直属であることには関係があるのか。
また、ヤクザを睨んだだけで、鼻血を出させ、倒したが、この力は何なのか。そして、なぜ、沢渡は鼻血を出したのに、倒れないのか。これらの謎が残る。
そして、マキマがヤクザ相手に語った国家と必要悪の関係は、どういう意味なのか。自分自身、あるいは、自分の組織である特異課が、国家に首輪をつけられた必要悪という意味か?
サムライソードの正体
沢渡が、若=サムライソードは、死んでも蘇ると言っており、また、第8話にて、狐が、「人でも悪魔でもない」と言っていたが、サムライソードは何者なのか。
ストーリーの構造解析
シリアスとコミカル、依然
前回、あれだけ怖そうだった未来の悪魔が、突然歌いながら踊り出したり、4課が突入するときに、岸辺が「作戦はない。特異課全員をビルにぶち込む」と言ったり、緊張感が高まりそうなシーンで、それをフリにしたコミカルさが今回もあり、相変わらず面白い。
岸辺、意外とまとも
アル中で頭のおかしい岸辺だが、実は、部下思いのところが垣間見れた。もしかしたら、アル中なのは、部下が死んでいったからなのかもしれない。意外とまともで、いい人なのだろうか、と思ってしまう。
だが、岸辺は、マキマが部下を殺すことを、容認している。その条件は、マキマが「人間の味方」であることだ。
つまり、岸辺は、育てた部下のことを大事に思いつつも、それ以上に、人間を守り、悪魔を倒すことを重視しており、手段を選ばない面をもっている。これは、マキマと同じではある。
違いは、目的のために犠牲にした仲間を弔い、心を尽くすか否かである。
マキマ、いよいよ悪者か?
それに対して、マキマの悪者っぷりが加速している。ほぼ確実に、襲撃を知っていたのにそれを言わず、仲間を見殺しにした。しかも、それに対して、何とも思っていないようである。
また、ヤクザに名前を書かせるために、ヤクザの身内の目玉をくり抜いた。そして、おそらくだが、第9話でやった方法で、別荘にいたヤクザたちを身代わりにし、立てこもっているヤクザを殺した。
このように、マキマは、目的のためなら、人の命を何とも思っていないし、とてつもなく残酷なことを平気でできる。
さらに、その目的も、岸辺が「嘘つき」と言ったことで、本当に人間のためなのかもわからなくなった。
アキの本音
さまざまなキャラクターが躍動する今話だが、その思想的中心は、アキだろう。
アキは、自分が今まともじゃなくて、自分を見失っていることは、わかっている。だが、わかった上で、他にどうしようもないのだ。
アキは、自分の家族を殺され、バディを殺された。でも、その復讐を果たせるほど、自分は強くない。そして、自分の寿命ももう長くはない。
自分が生きているうちに、本当に銃の悪魔を殺せるのか?
それは現実的ではない。と、まともに考えたらわかる。銃の悪魔は強く、今のアキでは太刀打ちできるはずがない。だけど、その現実を直視してしまったら、かろうじて自分を保てている支えを失ってしまう。
だから、アキはどんなに無謀でも、現実的じゃないと客観的にはわかっていても、銃の悪魔を殺すという目的を掲げ続けなくてならない。それが、アキが生きる唯一の意味なのである。ゆえに、アキは自分の死に方にも興味がないし、そもそも、自分の未来にも興味がない。
一見、芯があり強そうに見えるアキの精神は、こういった弱さの上に成り立っている。
京都から来た男に、自分のこういった状態を吐露したことは、アキの本音だろう。それは、果たして、現状に対する弱音なのか、それとも、自分を見失っていることを自分で受け入れてなお、覚悟を固めた言葉なのか、あるいは、それらの混ざり合った言葉なのか。見る人によって、解釈が異なるだろう。
まとめ
今話は、ストーリー的には、次回の戦闘のための準備の回であった。アキは、未来の悪魔と契約し、デンジとパワーは修行をある程度クリアし、マキマはヤクザのボスに乗り込んだ。ヤクザの方も、襲撃に備えていた。
そんな準備の回だからこそみえたキャラたちの新たな一面があった。
まずは、岸辺だろう。意外とまともで、部下思いの面が見られた。
次に、マキマ。ここ数話で彼女のヤバさはどんどん加速し、ほとんど悪人なのではないかと思えてくる。
そして、アキ。この回は、アキの回といってもいいだろう。彼の本心が今回見られた。
次回、アキはどのように、姫野のものだった幽霊の悪魔との戦いを切り抜けるのか、楽しみである。
